その翌日、私はロン・アンダーソンと一緒にゴルフをすることになりました。
彼はミスショットをしてしまった私に、「あなたは、目が見えないのではないか」とジョークを言います。私は「いや、耳が遠いので、盲人用のフラッグの音が聞こえないのだ」と応酬します。実に楽しい、明るい、幸せなひとときでした。
視覚障害者は、目は見えないが心の目は開いています。ゴルフコースの鳥のさえずりや草の臭い、サクサクと踏む芝生の感触やさわやかな空気の味。どれをとっても健常者以上に敏感に反応し、心の目で楽しみ、味わい、幸せを感じています。ナイスショットが出たら躍り上がって喜び、チョロや大スライスが出たら悄然とする。全く、健常者の私達と同じなのです。
「ようし、この爽快さを日本の視覚障害者にも伝えよう。日本へ帰ったら、早速盲人ゴルフクラブを作って、一人でも多くの視覚障害者に知ってもらおう、楽しんでもらおう」と、つぶやくように言って、自分の言葉を噛み締めました。
また、こうも思いました。
「地味な草の根運動であってもいい。少しずつ賛同者が現れ、そのすばらしさを知ってくれて波及するまでになれば、やがて日本の新しい福祉文化創造の一つのエネルギーになるだろう。」私は早速この確信に基づいて、日本初の盲人ゴルフクラブを創設したのです。
やがて、この私設の盲人ゴルフクラブは『日本盲人ゴルフ振興協会(旧日本盲人ゴルフ協会、略称JBGA)』として正式に発足しました。
私の第二の故郷オーストラリアのパースでも、オーストラリア盲人ゴルフ協会が発足しました。私は光栄なことに、97年にこのパースで開催された世界盲人ゴルフ協会発会式の場で、世界盲人ゴルフ協会の総裁に推薦して頂きました。ささやかな一灯をと思い、草の根運動をと思って黙々とやり続けて来たことが、こんな形で評価されるとは、思ってもみなかったことです。
盲人ゴルフは、大自然とともに、視覚障害者と健常者が同じ立場で仲良く楽しみ、喜び、かつ対等に競えるスポーツだからこそ、視覚障害者のためのメンタル面でのリハビリテーションには最適なのです。
肉体はたとえハンディを負ったとしても、人間として最も大切な気力、意欲、勇気、明るさ、積極性、創造性という、内面の健やかさまで失ってはなりません。それでは、心までハンディを負ったことになるからです。
こうして、心を蘇らせる盲人ゴルフのインターナショナルな推進。これこそが、私がたどりついた私にできる身障者の自己実現のお手伝いであり、私なりの福祉文化創造の具体的なステップなのです。
JBGAは平成12年6月、NPOとして認証されました。
1988年に日本初の盲人ゴルフの組織として発足して以来、視覚障害者の方々の自己実現のお手伝いをし、明るく発展的な生き方を可能にする新しい時代の真の福祉文化の創造をめざして、JBGAは国内外で活発な活動を行い、この13年間に大いなる実績と歴史を積み重ねることができました。この度JBGAは公益法人の一類型であるNPO法人として認証され、21世紀に向かって新たな一歩を踏み出すことができました。これからも、盲人ゴルフを通じてより多くの方々のお役に立てるよう、スタッフ一同一丸となって最善を尽くす所存です。
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