シアヌーク病院

1分1秒でも早く近代的な病院を― 米「ホープ・ワールドワイド」との運命的な出会い

シアヌーク国王自ら命名を

病院建設の計画を聞かれたカンボジアのシアヌーク国王はことのほか喜ばれ、この病院に自らの名を託し「シアヌーク病院」と命名してくださいました。さらに、プノンペンの一等地をカンボジア政府が提供してくださったのです。
こうして病院建設のプロジェクトは動き始めました。しかしながら、その完成・診療開始までの道のりは、平坦ではありませんでした。とりわけ、具体的にどのように運営していくかは、このプロジェクト最大の難関でした。
カンボジアがポル・ポト派支配下にあったとき、知識階級の人々は徹底的に迫害され、多くの医者が殺されてしまいました。現地で十分な医療チームを編成することはもはや不可能に近いのです。
まして、複雑な手当てや手術となると、外国人医師を派遣するしか方法がありません。しかも、24時間病院のため、三交代で運営し、最低200人近くのスタッフが必要とされています。事務、掃除、管理業務、看護・手当ての一部は現地の人々が担当できるとしても、重要なポストには今のところ外国人に就いてもらわなければなりません。一体どうしたら運営がスムーズに運び、カンボジアに長期的に貢献していけるのか、関係者一同が頭をかかえる問題でした。

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ゲンペル夫妻との出会い、そして意気投合

そんな時、決定的な出会いがありました。アメリカに本部を置く「ホープ・ワールドワイド」との邂逅です。
ホープ・ワールドワイドは、1991年に設立されたプロテスタント系の慈善事業団体です。このホープを支援しているのが、キリスト教のなかでも新宗教(新宗派)に属する「キリストの教会」(ChurchofChrist)。「キリストの教会」は、19世紀末にアメリカで創立され、いまや日本を含め、世界各国に十数万の信者たちがいます。
ホープの存在を知った私は、すぐに創立者であるゲンペル夫妻を日本に招聘し、1996年7月末に初めて会談を持ちました。ゲンペル夫妻は、宗教的情熱と誠意にあふれた純粋な方々で、私と共にプロジェクトを進めていける、またとないパートナーだと感じました。ゲンペル夫妻も志を同じくする者として強い共感をもってくださり、今後とも一緒にカンボジアの病院を運営していきたいとおっしゃったのです。

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患者の物語 レン・リー君

1年前、リー君は木から落ちて大腿骨を骨折しました。彼は州の病院で治療を受けましたが、激しい痛みが続き、やがて自分の太ももが徐々に変形していくのに気づきました。 彼は、カンボジア・トラスト・リハビリテーション・センターの協力を通じてシアヌーク病院に来院しましたが、そのとき彼の大腿骨は、90度も曲がっていました。コスタ医師による最初の手術は、彼の大腿骨を、当初の骨折部分で切断することでした。そして牽引を行い、筋肉を伸ばし、骨の末端をそろえ、大腿骨を固定するための長さを確保しました。 数週間後、2度めの手術が行われ、金属板とネジを使って彼の大腿骨をまっすぐにして固定しました。 彼は松葉杖をつく間にも体重が増え始め、現在は自分の足で歩いています。 母親は、こう話してくれました。「私は農民なので、息子の治療費なんてとても払えませんでした。息子が一生この問題をひきずるのかと思うと、絶望しました。こちらの病院でレンを治していただいて、感謝でいっぱいです。ここのスタッフの皆さんは、一生懸命働いて、貧しい人々を助けるために自分を捧げています。この国に、この病院があって本当に良かったと思います。感謝します」

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1996年、ついにシアヌーク病院が完成

そして、1996年12月…ついにシアヌーク病院は完成しました。
病院の設計は、日本の著名な建築家・丹下健三氏が無償で引き受けてくださったものです。その建物の洗練された美しさは、この国の未来への希望を象徴しているかのようです。
1996年12月9日には、シアヌーク国王主催の昼食会が開かれ、私をはじめ病院建設にあたった者たちは、王宮に招かれて国王夫妻と会食をすることができました。この病院の完成は、カンボジア王国にとって、それほどの慶事であったのです。さらに10日に行われたオープニング・セレモニーには、モニニス王妃をはじめ、ラナリット第一首相(シアヌーク国王の長男)、カンボジアの大臣たちも列席されました。
わずか2年前まで、誰も思い描いたことのなかった、「最新鋭の医療設備を備え、貧しい人でも無料で治療が受けられる、、24時間救急病院をカンボジアに!」という夢─。私とその仲間たちが抱いた純粋な想いは、大きく花開いたのです。

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シアヌーク国王からのメッセージ

1996年4月10日、深見氏とワールドメイトのスタッフが、カンボジア王宮においてシアヌーク国王と会見。会談のはじめに、シアヌーク病院開設に関して、シアヌーク国王より、たいへん上品な英語で感謝のお言葉を賜りました。

My warmest congratulations to you, Mr. Fukami. May I avail myself of this nice opportunity to express my deepest gratitude on behalf of the Cambodian people for your great generosity. This wonderful hospital with modern equipment is very much appreciated. I thank you very much for your kind, generous and noble actions towards Cambodia and the Cambodian people.

[日本語訳]
深見様、心よりご祝福申し上げます。
この場をお借りして、カンボジア国民に代わり、貴殿の広く温かいおこころざしに、厚く御礼申し上げます。最新の医療機器が装備された、この画期的な病院が実現することになり、これほどの喜びはありません。わが国とわが国民に対して捧げられた、貴殿の優しく、寛大で、そして尊い真心に、深く感謝申し上げます。

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2000年12月「ワールドメイトビル」命名の栄誉

2000年12月、私たちはシアヌーク病院完成4周年記念の式典に招待されました。そしてシアヌーク殿下の実弟で元外務大臣のシリブット殿下から病院のメインビルに「ワールドメイト・ビルディング」という名称を付けたいとのお申し出をいただいたのです。
病院には現在、内科病棟、外科病棟の他、手術室・研究所・薬局・医療図書館などが揃っています。中でも研究所はカンボジア一進んだ設備と技術を備えた研究施設として知られ、今では国立大学からここに研修に来るほどまでになっています。
また医療図書館は「カンボジア最高の医学図書館」との評価をいただいているそうです。
外科病棟で一人の少年と出会いました。この少年は幼い頃手にやけどを負い、それが原因で指がまったく動かなくなってしまっていたそうです。それをシアヌーク病院で手術し直したところ、すっかり直り来週には退院する予定だとのことでした。この少年が今の感動を胸に持ち続け、やがて自らも人の命を救う医者になるとしたら、私たちの善意は大きな花を咲かせたことになるのです。

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